キャサリン・ミュージックさんの手紙

有光綾子

2014年06月21日 18:01

5月11日のブログで、アメリカ人海洋生物学者キャサリン・ミュージックさんが、キャロライン・ケネディ駐日アメリカ大使宛てに手紙を出した、という新聞記事を紹介しました。

その後沖縄タイムスに、手紙の訳文が2回に分けて(上・下)掲載されました。






ケネディ大使への手紙  ◇上
(沖縄タイムス 2014年5月23日)

キャロライン・ケネディ閣下

 私がこの長い手紙を書いたのは、沖縄本島北東部の大浦湾(辺野古)にある素晴らしいサンゴ礁生態系を日米の軍備増強計画がもたらす破壊から守るよう、あなたのご助力を嘆願するためです。
 
 私は過去11年間(1981年~88年と2007年~2011年)沖縄に住み、海洋生物学者として働いてきました。そして北は奄美大島や喜界島から、南は与那国島まで、琉球列島全域の海に潜ってきました。この経験から私は、大浦湾の美しいサンゴ礁に匹敵するサンゴ礁生態系は他に残っていないことを保証します。何ということでしょうか!(あきさみよー!)
 
 このサンゴ礁が今も生き残っていることは、本当に奇跡といってよいでしょう。ここではサンゴの病気や白化が見られないのです!ここのサンゴ礁は、太平洋からカリブ海まで世界中のサンゴ礁を襲い破壊し続けているさまざまな問題を回避しているのです。(世界中のサンゴ礁が死滅しつつあり、現存するサンゴ礁が非常に貴重なものであることを、あなたも痛感されているでしょう)

 大浦湾は独自の素晴らしい生態系を有しています。ここには、マングローブ、川、カニたちの住む砂浜、パッチ状に広がる浅瀬のサンゴ礁(私の専門とする青サンゴや赤いイソバナが繁茂しています)があります。また、絶滅が危惧されるジュゴンは言うまでもなく、日本に生息するクマノミ全種が生息しており、浅瀬に無数の海草が群をなしています。中でも最も素晴らしいのが、「珊瑚博物館」と呼ばれるより深いところにあるサンゴ礁で、数えきれないほどの華麗なサンゴが集合しています。7回のダイブで見た限り、ここのサンゴの全てが生きていました。私はまるで自分が子供の頃-全てがまだ生き生きとして申し分なかった60年前-に戻ったような気がしました。

 私は、海洋生物を愛する立場からこの手紙を書いています。沖縄本島に残る最後の素晴らしいサンゴ礁を守るために、私と沖縄の人々に手を貸してくださいませんか?

 大浦湾に残る素晴らしいサンゴ礁をご自分の目でご覧になるために、1度(お望みなら何回か)私と一緒にこの海に潜ってみませんか。あなたは、最近の初の沖縄訪問の際に、ヘリコプターで上空から大浦湾を視察されたのかもしれません。でも2度目は、私と一緒にこの海で泳いでみませんか?時期は今年の6月か9月がよいでしょう(どちらかはご自由にお選びください。ただ、梅雨の季節や台風、観光客の多い時期は避けなければなりませんから、6月の方がよいと思います)。

 比較的安全な30フィート(約9メートル)の深さまで1度か2度潜れば、あなたはこの海のサンゴの美しさと重要性を確信されるでしょう。その素晴らしさを目にした後では、決してそれが消滅することを許容できないはずです。もちろん、この訪問を非公式にすることをお望みでしたら、訪問中メディアを遠ざけておくことができます。その代わり、沖縄の人々がこのサンゴ礁生態系を守るための手助けをしていただくことだけが、私の望みです。普天間基地を辺野古に移設するという決定を覆すことは、危急の課題なのです。

 2015年には破壊(移設工事)が始まることになっており、残された時間は限られています。これほどに美しく、本来の姿を保ったサンゴ礁が破壊されることは、決して起きてはならないことです。

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